こんにちは,えがきや代表です。
InstaComposer2 がリリースされました。リリース記念価格として,2023年8月28日時点で,W.A.Productionのサイトでアップグレード版が $10(カード支払時にカード会社の為替レートで円換算されます) で購入できました。新規購入の場合は,$32.70(通常価格 $109のところ)となっています。
Plugin Boutique のサイトでも購入できますが,こちらは英ポンド建ての価格を円換算していますので, W.A.Productionのサイトで購入した場合とで若干,円建ての価格が異なります。
なお,W.A.Production のサイトで購入すると,MIDIやWAVのデータパック TECHHOUSE MEGA PACK 3 が無料のおまけとしてついてきました。おまけ専用のパッケージのようですが,ただでもらえると嬉しいものです。
何が新しくなったのか
まず,InstaComposer2 の画面をご覧ください。
前バージョンとあまり違いがないように見えますが,しっかりと改良と進歩が取り入れられています。
詳しく見てまいりましょう。
6トラック化と生成モードの追加
InstaComposerの中で曲を自動生成するトラックは,前バージョンでは5トラックであったところ,新バージョンでは6トラックになりました。
そしてトラックの生成モードに新たにDrumモードが追加されました。そうです,ついにドラムセクションの自動生成に対応してくれたのです。
他にも PadモードとChordモードを合わせたPad2 という新しい生成モードが追加されました。低音部分はコード重視,高音部はなめらかなメロディ重視というPaddingを1トラックの中に作ってくれます。
シーン切替
従来,自動生成する度に曲がトラックに上書きされていました。Undo機能により,履歴を戻ることはできましたが,ある時点の作業画面全体を保存しておいて戻るようなことはできませんでした。
シーンは,これを複数保存しておいて,必要に応じて切り替えて使うことができるものです。
今回の新バージョンでは,8つのシーンを切り替えて作業を行うことできます。シーンの保存やロードはもちろん,シーン間でのコピペもできます。
いくつかのアイデアをシーンとしてとっておいて,後で比較したり,イントロとAメロの作曲画面を往き来したりということが容易にできるようになりました。
スケールの追加とコード進行の自動生成
前バージョンでは,選べるスケールはキーに対してメジャーかマイナーだけでしたが,新バージョンでは,ハーモニック,メロディックに加え,イオリアン,ドリアンなどの7つの旋法,Arabic, Blues等の地域やジャンル性を持つ22のスケールが追加されました。
前バージョンでは,面倒でもコード進行は自分で指定するか,既存のプリセットから読み込むかでしたが,新バージョンからはスケールにあったコード進行を自動生成できるようになりました。
このように新バージョンでは,まずスケールを選択し,それに合ったコード進行を自動生成し,それらに応じた曲の自動生成を行う のように,作業の流れが整理されました。
前バージョンでは,ある程度はコード進行を決めておく必要があったのに対して,まっさらの状態から作曲を始めやすくなったと思います。
私の場合,従来,スケールとコード進行の組み立てに Scaler2 を使い,その上で InstaComposer を使うのがベストだと思っていましたが,今後は InstaComposer2 だけで作業を完結できるかもしれません。
Logic Pro X上で使ってみる
早速,インストールし,ライセンスコードの認証をした上で Logic Pro X 上で使ってみました。
音源を持たないInstaComposer2をLogic Pro X のMIDIルーティングを通じて使うためには,Mac上でIACドライバを設定,有効にしなければなりません。この辺りは,”InstaComposerをLogic Pro X で使う”に詳しく書いておきましたので,ご参照ください。
まず空(から)のLogicのプロジェクトを作り,7つのMIDIトラックを作成します。
Track1からTrack7までを次のように設定してみました。
各トラックの音源は,InstaComposer2の各トラックの生成モードに応じて適当に変更します。
トラック | トラック名称 | MIDI FX | 音源 | MIDI入力jポート | MIDI入力チャネル |
1 | InstaCompo2 | InstaComposer2 | Utility – External Instrument | すべて | すべて |
2 | Insta Track 1 | Steinway Grand Piano | IAC Driver Bus 1 | 1 | |
3 | Insta Track 2 | Steinway Grand Piano | IAC Driver Bus 1 | 2 | |
4 | Insta Track 3 | Steinway Grand Piano | IAC Driver Bus 1 | 3 | |
5 | Insta Track 4 | Steinway Grand Piano | IAC Driver Bus 1 | 4 | |
6 | Insta Track 5 | Steinway Grand Piano | IAC Driver Bus 1 | 5 | |
7 | Insta Track 6 | SoCal | IAC Driver Bus 1 | 6 |
続いてTrack1の MIDI FX からInstaCompser2を開きます。
ここでは機能のテストのため,プリセット Factory1 – Cm-(Cm-Cm-G#m-G#m)_a を使ってみます。
Generate ペインで [A](すべてのトラック)をクリックしてから [GO]ボタンをクリックすると6つのトラックに対して曲が自動生成されます。
InstaComposer2の6つのトラックが M(ミュート)やS(ソロ)になっていないこと,およびLogic Pro Xの7つのMIDIトラックが M, Sになっていないこと,そしてR(レコード)が On になっていることを確認します。
InstaComposer2のPlay ボタン(三角ボタン)をクリックすると,MIDIデータが上で指定したLogicのTrack2からTrack7へ分配されて,それぞれのトラックの音源が鳴り始めます。MIDIルーティングの方法は前のバージョンと同じ方法で良いようです。
このファイルをテンプレートとして保存しておけば,次回は「テンプレートから新規作成」メニューから InstaComposer2が組み込まれた新プロジェクトを作ることができるようになりますのでお薦めです。
また音が出ない(泣)
前バージョンのInstaComposerを初めてインストールしたときに「音が出ない」という事象に悩まされましたが,新バージョンでも次のような事象が起きました。
・InstaComposer2の Play ボタン(三角ボタン)をクリックして音が出ない。
・最初の1音が鳴ったところで止まってしまう。
これらはどうもLogic側のMIDIルーティングとの相性の問題のように思います。
音が出ない場合,まずInstaComposer2側で M(ミュート)やS(ソロ)の設定になっていないことを確認しました。続いてLogic側の各トラックがMやSになっておらず,かつR(レコード)On の状態になっていることを確認しました。
その上で一度 InstaComposer2のウィンドウから離れて,Logic上の別のMIDIトラックを選択してから,LogicのTrack1(InstaComposer2がMidiFXプラグインとして設定されているトラック)を選択しなおして InstaComposer2のウィンドウで操作するとうまく鳴り始めました。
Logic上でフォーカスしているトラックを切り替えるときに,何らかのイベントが発生してInstaComposer2のMIDI音源ポートと同期がとられるのかもしれません。
それでもダメならばInstaComposer2 を Midi FX のプラグインから外し,もう一度,設定するとだいたいうまくいきました。
一度,音が鳴り始めると不思議と同じ問題が起きません。この辺りは前バージョンから変わりがなく,やはりLogic側のMIDIルーティングに問題があるか,相性が悪いのかだと思われます。
新バージョンはありか?なしか?
新バージョンの最大の魅力と思われたドラムセクションの自動生成は,思ったほどのインパクトはありませんでした。正直,「本当に曲に合っているのか?」と思うような浮いた感じになることがあり,まだ手放しでは使えないと感じています。もう少し使ってみて検証してみたいところです。
一方,新たに追加されたスケールと,それに応じたコード進行の自動生成機能は,プリセットに頼らずに欲しい曲調やジャンルを指向しやすくなりました。また,シーン機能は地味に便利です。
総じて,今回のセール期間の価格であれば十分にアップグレードする価値はあると思います。
/えがきやLLC
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