福岡 中央区今泉 「和酒処 小料理 酒幸」

酒と肴

こんにちは。「私」こと,えがきやLLCのCEOです。

前にご紹介した福岡 中央区渡辺通 「和酒処 酒峰」には,姉妹店と呼ぶべき店が二店あります。
時間制飲み放題が特徴で,カジュアルかつリーズナブルに日本酒や焼酎を楽しめる「和酒処 博多 酒虹」さん。そして,掘りごたつ式の卓を囲んで酒と料理を仲間と一緒に楽しめる「和酒処 小料理 酒幸」さん。いずれも,酒峰さん譲りの稀少な日本酒と質の高い食材を使った料理が売り物です。ただし,それぞれ別々の考え方で経営されているようで,三店舗がそれぞれ違う店と考えて良いと思います。今回はこの内,「和酒処 小料理 酒幸」をご紹介します。

和酒処 小料理 酒幸
福岡県福岡市中央区今泉2丁目4-36 TIO今泉5階
092-231-9404

前にご紹介した「和酒処 酒峰」は,稀少な地酒と高品質の食材との出会いを店主の語りとともにバースタイルで楽しむ店であるのに対して,今回ご紹介する「和酒処 小料理 酒幸」は,気の置けない仲間と一緒に掘りごたつ式の卓を囲んで,お酒と料理を楽しむことができるお店です。少人数の客向けにカウンター席もあります。店主は,和食に通じ,寿司も握れる方です。
私は,酒幸さんを「料理とお酒の組み合わせを楽しむ店」であると考えています。酒幸さんは,店主に気軽に尋ねると,積極的にお薦めの料理と酒の組み合わせを提案してくれます。「フレンチの料理とワインの組み合わせをソムリエに尋ねるのと同じ」と考えると分かりやすいと思います。

今回,年末のご多忙の折でしたが,二回,お店にお邪魔して取材させていただきました。
いずれも,その日のお薦めの料理と自分で選んだ料理を注文し,それぞれに合うお酒を店主に選んでいただきました。

以下,すべて私の個人的な感想と解釈によるご紹介となります。
いずれも店,あるいは店主のお考えを代弁しているものではないことをお断りしておきます。

一日目

約二年ぶりに訪れた酒幸さんで,料理に合わせてお酒をお薦めいただきました。

最初の一杯は,「鍋島」純米大吟醸です。贅沢な香りと甘み,うま味が濃密にあふれたアタックからの余韻が舌の上に長く続きます。食前酒として,食欲を刺激する素晴らしいチョイスです。

「鍋島」純米大吟醸 兵庫県特A地区 吉川産 山田錦

お通しは,おひたしです。当店の出汁の味と二年ぶりに再会しました。

おひたしの出汁の味が嬉しい

二杯目は,「龍神」隠し酒 Back Stage Pass です。こちらも上品な甘みと太いうま味が広がる素晴らしいお味でした。これは,卵焼きに合わせて選んでいただいたものです。料理とお酒の甘みが喧嘩することなく引き立て合っていました。お酒が美味しくて,料理より先にグラスが空いてしまいました。

「龍神」BACK STAGE PASS 隠し酒 吟醸

三杯目は,「七田」純米無濾過です。久しぶりに訪れた福岡ということで,「九州のお酒を飲んでいってください」と店主。アタックは甘みが最初に出てきますが,すぐに良い感じのドライ感が始まります。その後,すっきり。食中のお酒として,いろいろな料理に合いそうです。

「七田」純米無濾過 様々な料理と相性のよい良酒。少し辛めの後味が,食欲を誘う。個人的に大好き。

四杯目は,「天吹」生酛(きもと)純米大吟醸です。花のような吟醸香となんだろうか果物の味。強い甘みと気持ちよいドライ感。この後にやってくる主菜に合わせてのチョイスです。

「天吹」生酛 純米大吟醸 華やかな香りとフルーティな味

入店と当時に注文していた,「鯛のあら煮」ができあがりました。私が酒幸さんに通うのは,質の良い魚が仕入れてあるときに,この焚き物,煮物を食べるためです。この後,小一時間,鯛の骨と格闘しつつ黙々と食べ,呑みました。

鯛のあら煮 甘く味付けられた身を骨をしゃぶりながら黙々と食べる。「焼き」もできるとのこと。 

あら煮をたいらげる前にグラスが空き,五杯目に。「萩の露」純米吟醸です。煮魚の味でいっぱいになっている口の中が,きれいな甘さとしっかりしたうま味,そしてドライ感でリセットしてもらえました。後口がすっきりしており,次に料理を口にするときにノイズになりません。店主さん,よく心得てチョイスいただき感謝です。

「萩の露」純米吟醸 煮魚の濃い味を

ここからは,しばらく熱燗をいただきます。だいぶ外も寒くなってきたので,宿までの帰り道の暖をとっておこうという寸法です。「九頭龍」燗たのし,「播州一献」愛山 山廃純米をそれぞれ一合ずつ燗づけてもらいました。

「九頭龍」燗たのし  その名の通り,燗酒でいただくと香りと味が立ち上る。
「播州一献」山廃純米 山廃造りの濃厚なうま味が緘に燗に付けることでより濃厚に味わえる。

ここでちょっと,いたずらをお願いしました。先ほどの鯛のあら煮の煮汁を塗ってもらって焼きおにぎりを作ってもらいました。新鮮な鯛を煮てスグの煮汁には臭みなどなく,ロースターであぶって焦げたところから,甘い香気が立ち上ります。味も煮汁のうま味が凝縮され最高です。店主曰く,「作り置きの煮魚の煮汁だとどうしても匂いが出てしまいます。鯛(の質)がよいことと,作ってすぐの煮汁であることでこの味が出ました。」とのこと。いつでも食べられる訳でないのですね。

あら煮の煮汁を塗って焼いてもらった焼きおにぎり。新鮮な素材を使った作りたての煮魚の煮汁だから味わえる贅沢。

以上,まだ他のお客さんが来る前の早い時間帯にお邪魔して,ワガママを聞いていただきました。こちらのお店も酒峰さんと同様,店主お一人で切り盛りされています。他のお客さんがいるときは,さすがにここまでは,お願いできません。ただ,料理やお酒の組み合わせをチョイスを相談するのはお薦めです。料理のメニューと保冷庫の酒の相性を一番ご存知なのは店主ですから。

最初から〆まで大満足でした。

二日目

本日の一杯目は,「山本」純米大吟醸。華やかな香りと甘み,太いうま味。後味は辛みが立つが,すぐに消えてすっきり。さらさらの後口。はい,食前酒として最高ですね。

「山本」純米大吟醸 甘み,香り,うま味のどれも強く,ドライ感もあるが後味はすっきり。

この日のお通しは,「ごま豆腐」。


天然鯛のお刺身とそれに合わせて「村祐」と,”裏村祐”こと「祐村」の飲み比べ。

天然鯛のお刺身。 身のうま味が強く味わいが深い。


続いて「いろは牡蠣」と,それに合わせて「村祐」と裏村祐こと「祐村」の飲み比べです。
牡蠣は小粒ですが,味が凝縮されています。合わせた酒の力と相まって,うま味が引き立ちます。

「いろは牡蠣」佐賀県唐津市のブランド牡蠣。小粒だが,味は濃く深い。
「村祐」と「祐村」 当然,同じ傾向の味なのだが,時間軸上に現れる味,香り,うま味,余韻が違う。

村祐は,果実のような味とすっきりしたきれいなうま味。後口があっさりして,とてもきれいなお酒でした。一方,祐村もきれいな甘みとすっきりサラサラの感覚は同じですが,強く後味が舌の上,口の中に残ります。余韻が楽しい銘柄でした。どちらも生牡蠣との相性は最高です。小粒ですが味が強い「いろはガキ」と一緒に口の中に含むと,酒とカキがうま味が引き立て合って,その後で口の中をすっきりときれいにしてくれたような感じになります。

続いて「仙禽」クラシック仙禽 亀の尾2021。まず,よい香りが鼻と口に広がります。アタックは優しく端麗な印象ですが,すぐにうま味が立ち上がりはっきりと像を結びます。そして後味は強く,余韻を楽しむことができます。

「仙禽」クラシック仙禽 亀の尾2021

このお酒は次の「鶏肉の辛子マヨネーズ炒め」に合わせてもらいました。絶妙に乳化してマヨネーズに封じ込められた鳥の脂のうま味が楽しい一皿ですが,仙禽は肉と脂に真っ向勝負して負けません。

鶏肉のマスタードマヨネーズ炒め 鶏の脂がマヨネーズソースに乳化されて肉に絡みついて美味しい。

この料理にはもう一杯,合わせてもらいました。「城陽」Expressive。飲み口から,中盤,後味まで,ずっと太いうま味感が口の中にあり続けます。若干の生感(ガス感)がありました。こちらも,鶏肉と脂に負けないチョイスです。

「城陽」Expressive アタックから後味までずっとうま味が強い。

本日の主菜は,地鶏の炭火焼きです。これには,「而今」千本錦 純米吟醸 と,「而今」特別純米 火入 の飲み比べをいただきました。

「而今」純米吟醸は,香り,甘み,うま味がすべて含まれた太い味が飲み口から広がり,それらが引いた後も舌の上にうま味だけ余韻が残ります。

「而今」特別純米 火入は,よく似たプロフィールの味ですが,よりフルーティで,後味はもっと鮮明に舌の上に残り続けます。

どちらも鶏肉のうま味を受け止めるのに十分過ぎるほどの実力です。

次に揚げ物を二品お願いしました。フライドポテト(バターと酒盗乗せ)と鯛のフライのタルタルソース添えです。これらを迎えるのは,「蓬莱」蔵まつり中止残念記念酒 です。ウイットの効いたラベルにクスッとしましたが,味は本格的なものでした。

フライドポテトにバターとアンチョビならぬ酒盗がのせられている。それぞれが強い味のところ,黒胡椒がまとめている。
鯛のフライ タルタルソース添え サクサクの衣と加熱して味が強まった鯛の身が酒とよく合う。
「蓬莱」蔵まつり中止残念記念酒 酒蔵様の無念,確かに受け取りました。美味しゅうございました。

以上,酒幸さんでの酒と料理の幸せなマリアージュの二日間でした。

料理からお酒を選んでもらっても,お酒から料理を選んでもらっても,あるいは両方の組み合わせを提案してもらっても的確な回答が用意できる店主ですので,メニューに迷ったら甘えて尋ねてみるのがこの店の正しい楽しみ方ではないかと思います。

今回,写真をご紹介できませんでしたが,握り寿司を楽しめるのも,この店の特徴です。仕入れなどの状況ですべてのネタがいつもあるわけではないのですが,予約時,あるいは入店時に「今日はお寿司ありますか?」と聞いてみると,お薦めのネタを教えてくれると思いますので,その分だけお腹を少し空けておくと良いと思います。(寿司は別腹という人は除く)

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