こんにちは。「私」こと えがきやLLC のCEOです。
前回,合同会社えがきや の登記が完了するまでを記しました。
これに続いて,税務署や役所への届出や申請を行いました。
大きく分けると:
- 新しい法人を設立したことを税務署,県税事務所,区役所へ届け出る ⇒ 法人税の対象となる
- 新しい法人が設立されたので,協会けんぽ,厚生年金へ加入し,被保険者となる社員(私)を届け出る ⇒ 健康保険,年金の切替
- 新しい法人が設立されたので,事業所税の対象として届け出る。(横浜市の場合)
- 起業により失業状態ではなくなったのでハローワークへ届け出る ⇒ 失業給付金の受給資格の最後の日付を確定する
- 再就職したので,ハローワークへ再就職手当の受給を申請する
これらのためには,各役所に対して次のように届出・申請を行わなければなりません。
届出先 | 届出・申請 | 内容 | 届出・申告の期限 |
---|---|---|---|
税務署 | 法人設立届出 | 国税の課税対象となる新しい法人が設立されたことを届け出る。 | 登記以後,2ヶ月以内 |
給与支払い事務所等の開設等届出 | 社員・従業員への給与支払と源泉徴収が行われる事務所の設置を届出。 | 開設・移転・廃止の事実があった日から1ヶ月以内 | |
青色申告の承認申請 | 税務申告に青色申告を行うことの承認を求める。 | 青色申告を申告する年の3月15日まで | |
電子申告・納税等開始(変更等)届出(税理士代理提出・法人回使用) | 新しい法人が電子申告・電子納税を利用するための届出。 | 申告・申請・届出・納税を行おうとする前 | |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請 | 給与の支給人員が常時10名未満である源泉徴収義務者が給与などの源泉徴収をした所得税・復興特別所得税について,通常は翌月10日が納期限となるところを,年に2回まとめて納付できる特例制度の利用を申請。 | 定めなし | |
都道府県税事務所 | 法人設立・設置届 | 都道府県税の課税対象となる新しい法人が設立されたことを届け出る。 | 神奈川県の場合,事実発生から2ヶ月以内 |
事業所税を徴収する市区町村 | 事業所等(新設・廃止)申告書 | 事業所税を徴収する市に対して,事業所の新設・廃止を申告する。 | 横浜市の場合,事実発生から1ヶ月以内 |
市区町村 | 法人設立・設置届 | 市区町村税の課税対象となる新しい法人が設立されたことを届け出る。 | 横浜市の場合,設立した日以後,30日以内 |
日本年金機構 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 新しい法人が設立され,健康保険,厚生年金への加入を新規に行うことを届け出る。 | 事実発生から5日以内 |
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険70歳以上被雇用者該当届 | 新しい法人の社員,従業員が健康保険,厚生年金の被保険者の資格を得たこと届け出る。 | 事実発生から5日以内 | |
被扶養者(異動)届 | 新しい法人の社員,従業員の扶養家族を被保険者とするために届け出る。 | 事実発生から5日以内 | |
ハローワーク | 失業給付金の最後の失業認定 | 就職日の前日までを失業認定日として最後の認定を受ける。 | 就職日の前日 自営の場合は,事前に相談 |
再就職手当の申請 | 失業給付金の受給期間を残して就職した場合に,諸条件を充たす場合,再就職手当の受給を申請する。 | 上記の届出の際,一緒に |
それぞれの届出,申請の意味や必要性は理解できますが,記入する内容はどれも似たようなもので,すべて手で起票する等,できれば避けたいですし,用意した書類を各役所へ持参して提出するのはやりたくないですね。
マネーフォワード法人設立サービスは,これらの書類を自動的に作成し,PDFファイルとして保存することができます。書類を作成する手間は,これで大幅に削減できたのですが,ちょっと気になることがありました。
マネーフォワード法人設立サービスから作成した税務署他へ提出する「法人設立・設置届」の書式が,国税,県税,市税が採用している共通書式のものとわずかに違っていたのです。マネーフォワードのサイトでは,各役所の採用している書式と異なる場合は,役所の書式を使うように注意書きがありますので,自動作成されたPDFを使わずに自分で起票することになりそうだと諦めかけたところ,デジタル庁の法人設立ワンストップサービスというサービスを見つけました。このサービスは,法人設立後に行う届出,申請書類を作成し,各役所の電子申請へ一斉に送信することができるサイトです。少なくとも書類を手書きする必要がなさそうです。また,提出書類を各役所へ持参する手間を省くことができます。
法人設立ワンストップサービスを利用する
まず,デジタル庁の法人設立ワンストップサービスを利用するためには,以下のものが必要でした。
- 申請者(私)のマイナンバーカード
- マイナンバーカードの暗証番号(カード交付時に設定)
- マイナンバーカードの電子署名用の暗証コード(カード交付時に設定)
- マイナンバーカードを読み取ることができるICカードリーダ または マイナンバーカードを読み取ることができるスマホ(マイナンバーポータルAPのインストールが必要)
このサービスは,マイナポータルの基盤の上に作られているわけですね。以下に企画段階での会議資料がありました。コロナ禍以前からの検討,企画であったようです。
【ご参考】法人設立手続オンライン/ワンストップ化検討会(首相官邸 政策会議)
法人設立ワンストップサービスでは,最初にアンケートのような質問「法人設立関連手続 かんたん問診・申請」に回答すると,届出や申請が必要な書類をリストアップしてくれます。次にそれらの書類に記入される内容を延々と入力していきます。入力が一通り完了すると,各書類に入力したデータが転記されます。このとき,各書類は通常の紙の書式とは異なる「データの並び」のような書式(ただし,人間が可読)のPDFになります。銀行口座を開設するときなど,税務署へ提出した「法人設立届」のコピーを求められることがありますが,このサービスで税務署へ送られる「法人設立届」は通常の紙の書式とは異なるため,銀行によっては説明が必要な場合もあると思います。(電子申請した場合への配慮をしてくれる銀行もありますが。)
法人設立ワンストップサービスを使ってみての感想
法人登記後に,税務署,県税事務所,区役所,年金事務所と届出,申請をしなければならないはずでした。郵送での申請も可能ですが,たくさんの書類を印刷し,資料を添付し,押印する必要があります。その手間を電子申請で省くことができるのは,ありがたいことではあります。また,国税,地方税,社会保険とで電子申請のプラットフォームが異なるところを「見かけ」上,一つのサイトから申請することができるようになったことは評価すべきであると思います。
しかし,申請した内容の処理は各役所のシステムごとにバラバラに行われるため,エラーへの対応や進捗の確認,質問などは各役所ごとにしなければなりません。
例えば,税務署(国税),県税事務所(県税),区役所(区税)に対する法人設立届は,同一書式を使っているにも係わらず,届出はそれぞれの役所に行う必要があります。内容が同一であるならば,1つの届出を集中管理し,各役所が参照する形になるのが理想型でしょう。しかし,あくまで同サイトは,「紙の書類提出と同等のものを複数の役所へ一つのサイトから送ることができる」というだけで,本質的なデータ集中を促しているわけではありません。縦割りで旧弊な役所のシステムを横断した集中参照系データの仕組みを導入するのは簡単なことではないでしょうが,今のサービスに満足されては困ります。また,そもそも法務局の登記情報が役所間で共有されていないことの是非から検討されるべきであると思います。
そういえば,法人設立届の提出にあたり,面白いトラブルがありました。上記の通り,同じ内容の届出が税務署,県税事務所,区役所に提出されましたが,その際にPDF形式の定款を添付します。私は登記に使った電子定款ファイルをそのまま添付しました。ただ,この電子定款ファイルは行政書士が証明書を付したものですが,ファイルを提供された時点でファイル名が文字化けしていました。行政書士と相談の上,このファイル名は変更せずに使うことになりましたが,おそらくこれが原因で税務署では受理されましたが,県税事務所,区役所では不受理となりました。送り返されたエラーメッセージを調べると,不適切なファイル名云々とあります。(ただし,どのファイルが問題であったかは分かりませんでした。)そこで,電子定款ファイルのファイル名をASCII文字だけに変更して送信したところ,無事に受理されました。つまり,国税のシステム(e-Tax)と地方税のシステム(eLTAX)が縦割りで異なるため,添付ファイルのファイル名に使える文字の仕様も異なるため片方は受理され,片方は不受理となったと思います。
同サイトを利用して,一番印象的であったのは,年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を同サイトからオンラインで申請したものの,社員の「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険70歳以上被雇用者該当届」を出していないために「保留」されていたというものでした。このことは,「新規適用届」の処理がなかなか進まないことから年金事務所へ問い合わせたことで教えてもらったものです。
そして,社員の「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険70歳以上被雇用者該当届」は同サイトからオンライン申請することはできず,郵送で行うことになりました。チグハグですね。これらの届出は,従来であれば事務所へ持参して提出する,あるいは郵送することで同じタイミングで年金事務所へ届くものであったと思いますが,同サイトはその一方だけを電子申請し,一方を郵送で申請するようにしています。年金事務所のご担当者も,正直なところ困っているのではないでしょうか。
このように単にワンストップ化することでは,本来の煩雑な複数の役所への書類提出の問題等は解決されません。申請そのものが電子化されても,バックエンドの処理は人間と既存システムによるもので,うまく進まない場合は人間が積極的に働きかけないと問題は解決しません。これが取り組みの始まりであって,完成ではないことを期待します。
とはいえ,法人登記,登記後の手続きは一生に何度も行うこともないでしょうから,これはよい勉強,よい経験になりました。これこそ,人生を楽しむという弊社の方針に合致していたわけです。
えがきやLLC
CEO
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