合同会社の作り方(1) 会社の住所

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こんにちは。「私」こと,えがきやLLCのCEOです。

前回は合同会社の設立までにどのようなことを行ったかを時系列で振り返りリストにしてみました。
その最初に挙げたのが,会社の住所をどうするかを決めるというものでした。

会社の住所をどうするか

会社の住所とは:

  • 法人の登記の際に使われる (その後,様々な書類に記載することになる)
  • 名刺や自社のHPへ表示する

という使われ方をします。

私の場合,一人社長のミニマム法人であるため,自宅を事務所に使う想定でしたが,自社HPや名刺,あるいはいろいろな場面で自宅の住所を公開しなければならないのは,ちょっとためらいがありました。そこで登記やその後の郵便物の配送に使える住所を貸してもらう「バーチャルオフィス」の利用を考えました。

ここでおことわりしておきますが,自宅住所を登記に使わなくても,会社代表者の住所は登記申請書類に記入するため,登記簿謄本を取得すれば社員(合同会社では役員と出資者をあわせたようなもの)の住所を調べることができます。したがって,合同会社の社員はある程度,自宅住所が公知となることを覚悟する必要はあるため,わざわざバーチャルオフィスを使わないという考え方もあります。また,定款にも社員の氏名と住所は記載するため,不用意に定款をHP上に掲載すると自宅住所をさらしてしまうことになります。

バーチャルオフィスの利用

いろいろと検討して,やはり自宅住所を使いたくないという気持ちが強いため,バーチャルオフィスを利用することにしました。
バーチャルオフィスを選ぶときに大事であったことは:

  • 自宅から近い,あるいは交通が便利で行きやすいこと。
  • 書留などを含む封書の郵便を代わりに受け取ってくれるサービスがあること。(さらに必要であれば,それらを自宅まで転送するサービスがあること。)
  • ある程度,実績があり容易にバーチャルオフィス事業をやめないしっかりした会社がサービスしていること。
  • 上記に見合う料金であること。

まず,自宅に近い,あるいは交通が便利で行きやすい場所であることは大事です。これは,次にあげている「郵便物の受け取り」をお願いするため,大事な郵便物が届いたときにすぐに取りに行ける,あるいは転送してもらえないと取りに行くのが大変ということになります。会社設立直後は,税務や社会保険,銀行口座開設などの書類が登記された事務所の住所に届くので,特に重要でした。

またバーチャルオフィス事業をちゃんと継続してくれるしっかりとした会社がサービスをしているということが大変重要です。なぜならば,万が一,バーチャルオフィスの住所が使えなくなってしまった場合,定款や登記内容の変更が必要となり,そこから派生して様々な届出の変更や修正が発生するからです。定款の変更,登記内容の変更は費用がかかりますので,手間だけではなくコスト面からも嬉しくない事態です。バーチャルオフィス事業を行う会社が,安易にこのサービスから撤退するようなことがないよう,バーチャルオフィス事業の実績や起業する会社への責任などをちゃんと理解しているかなど,納得がいく会社のサービスを選ぶべきと考えました。

そして,これらが適切な料金でサービスされていることが重要となります。

私の場合,横浜市西区にある株式会社ブルーコンパス様のバーチャルオフィスを利用することにしました。JR横浜駅からも近く通いやすいこと,封書郵便物の受け取りが可能で,届くと写真を撮ってFaceBookのメッセージを通してお知らせしてくれること,必要であれば転送サービスのオプション契約も可能であることをまず確認しました。
また,同社は「女性の起業を応援する」というコンセプトで,すでに多くのサービス実績があり,また同住所でのシェアオフィスサービスを行っているため安易な撤退などはないだろうと判断しました。

バーチャルサービスの利用料金は,入会費 10,000円,法人の月会費 4,800円/月(いずれも2021年11月現在)となっています。横浜市内の他のサービスと比べたとき,私の場合は自宅から近くて通いやすい(=交通費を抑えられる)というメリットがありました。

入会の申し込みは,同社のHPから入会申請のPDFフォームをダウンロードし,必要事項を入力してこれをメールで送ります。その際,審査がありますので,申込者の本人確認書類(免許証の表裏のスキャンPDF)と会社の業務内容などを説明できる簡単な資料(定款の事業内容とそれらの簡単な説明,会社設立者の過去の来歴などを含む)を添付しました。

なお,私のように男性一人が起業した会社では,ブルーコンパス様のサービスやイベントの中で「女性限定」とされているものは利用できないことがあります。これらを活用したいと考えるならば,夫婦で共同起業するなどを検討されるとよいと思います。


ご参考

株式会社ブルーコンパス
神奈川県横浜市西区平沼一丁目40番1号嶋森ビル8階
同社HP: https://bluecompass.co.jp/
同社バーチャルオフィスの紹介: https://bluecompass.co.jp/virtual

バーチャルオフィスを利用することのデメリット

巷間,「会社の住所を借りている」というバーチャルオフィスのデメリットが語られていることがあります。典型的なものが:

  • 取引相手先が,物理住所を持たない会社との取引を嫌がる
  • 銀行が,物理住所を持たない会社の法人口座開設を嫌がる

というものです。

どちらも「ソースは?」と聞きたくなる噂レベルのものです。そういう会社もあるでしょうし,そうした会社に勤めていた担当者が「以前は〜だった」的なことを言っているかもしれません。ただし,これを世の中の常識とするのはどうかと思います。実際にバーチャルオフィスを利用して起業した会社が立派に事業を営んでいるわけですから。

私の場合,イラスト制作は自社では営業せずに,アマチュア,フリーランス,法人が同じようにサービスを提供しているクラウドソーシングやスキルマッチサイトを使って案件を獲得し,制作作業はすべてリモートで行うため,お客様と直接お会いすることがありません。したがって,弊社がバーチャルオフィスを使っているからといってお客様が取引をためらうことは考えにくいです。

銀行の口座開設については,審査が保守的な場合,こういうことがあるかもしれません。これは起業する会社の信用の問題というよりは,近年の銀行が国際的なマネーロンダリング防止のために事業実態を伴わない(あるいは,起業直後で確認できない)会社の口座開設に消極的である上,口座開設の審査を合理化するために書類のみで審査が行われ,法人に対して事業計画の直接の説明を求めないこともあると思われます。また,銀行も私企業である以上,口座を開設した法人が活発に事業を展開し預金を増やしたり,送金などの取引手数料による収益を狙うのは当然です。そのため、企業の事業計画などは当然、吟味されます。
個人事業主から法人成りされる会社であれば,前年度の事業実績や決算資料,直近の取引状況などを示すことで「事業実態」を示すことができますので,こうした審査にバーチャルオフィスの利用が陰を落とすとは考えにくいです。私のようにいきなり法人を設立した場合は、こうした実績をベースにした説明ができないため事業の計画や内容の説明をより丁寧に行う必要があります。

私の場合,”起業したばかりの法人に理解がある”とされるネット銀行三行に口座開設を依頼しました。その内,GMOあおぞらネット銀行に口座を開設することができました。同行は,バーチャルオフィス利用でも口座開設が可能である(ただし,事業実態を伴った住所であること。下記の「創業手帳」サイトのリンク先 POINT 04 を参照)ことを示しています。なお、私のように前年度実績がない会社の実態を把握するため,「提出した資料では不足であるため追加の提出」を求めてきました。他の二行はこうした追加提出を求めることなく黙って審査落ちとなりました。そのため、同行の審査が起業家の立場を積極的に理解しようとしていると考えられ好感が持てました。

銀行が口座開設の審査基準や条件を公開することはありません。私は,答えの出ないバーチャルオフィス利用のデメリットで悩むよりも,自宅住所の公開を抑制できるバーチャルオフィスのメリットをとりました。この決断には,当時も今も後悔はありません。

[2023.02.14追記]

GMOあおぞらネット銀行において,ペイジー(Pay-easy)のサービスが利用可能になりました。税金や社会保険の支払いを同行の法人口座から行うことができるより,起業時に法人口座を開設する最初の銀行として,さらにお薦めできるようになりました。

えがきやLLC
CEO

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