こんにちは。「私」こと えがきやLLC のCEOです。
会社住所にバーチャルオフィスを利用し,あらかじめ会社のドメインを取得,HP開設まで進んだところで,次は法人登記申請の準備となります。
登記申請サポートの無料サービスを利用する
法人登記は初めてですので,何をいつまでに用意すれば良いのか自信がありません。行政書士らに法人登記の有料サービスもありますが,せっかくの機会ですので自分でできることをやってみて勉強としたいと考えました。その際,ネット上の法人登記申請をサポートするサービスの中から無料のものを利用することにしました。
有名なところでは,次の二つだと思います。
どちらも新しく設立した会社で,それぞれのクラウド会計などのサービスを使ってもらうのが目的ですが,法人設立のサービスだけを無料で使うこともできます。私は,マネーフォワードのクラウド会計サービスを使う予定がありましたので,迷わずマネーフォワード法人設立サービスを利用することにしました。freee ではなく,マネーフォワードのクラウド会計を選んだ理由は,個人的にマネーフォワードMeという家計簿サービスを使っていて親近感があったことと,”freeeと比べると仕訳の直接入力がしやすい” という評判をネット上でいくつか見かけたからです。freee を自分で試した結果ではないので本当のところはどうか分かりませんが,マネーフォワードクラウド会計は確かに仕訳の直接入力が気軽に行えるため便利でした。
一方、これはある程度、仕訳を自分で切れる人にとっての利点です。簿記や経理の経験がない人が初めて会計を行う場合は、freeeの方が誤って仕訳が入力されるのを防ぐよう配慮されているため安心という評価も目にしました。
マネーフォワード クラウド会計の使用感については、いずれまとめてレビューを記そうと思います。
マネーフォワード法人設立サービスは,大きく分けると次の4つのステップで登記をサポートしてくれます。
- 登記に必要な情報を入力し,次の法人登記申請に必要な書類をPDF形式で作成する。
・定款
・合同会社設立登記申請書
・収入印紙貼付台紙
・代表社員,本店所在地及び資本金決定書
・就任承諾書
・(資本金の)払込があったことを証する書面
・印鑑(改印)届書
・別紙 (※ 定款の抜粋と提出書類の一覧) - マネーフォワード法人設立サービスで作成した定款のPDFファイルを行政書士法人へ送り,簡単な内容の確認と電子定款に必要な電子証明を付与してもらう。(電子メールで証明書付PDFが返送されます)
- 登記申請
- 登記完了後に税務署,県税事務所,市区町村役場,年金事務所へ提出する届出書や申請書を作成してくれる。
手順1と2の間で会社の印鑑の準備や,新会社の代表となる自分の印鑑証明取得,資本金の払い込みなどが必要になりますが,マネーフォワード法人設立サービス画面上で適宜,促してくれます。
なお,マネーフォワード法人設立サービスから行政書士へ電子定款の証明付与を依頼する場合,発行手数料5,000円がかかるところ,「マネーフォワードクラウドの有料プラン」を契約すると,これが無料になります。私は元々,マネーフォワードクラウド会計を利用するつもりでしたので,ここでも喜んで囲い込まれることにしました。法人スモールビジネス年額プランで35,760円(1ヶ月あたり 2,980円)でした。
印鑑も同サービスの中で購入することができますが,私は「はんこの森」というサイトのネット通販で会社・法人印鑑三本セットの一番,安いものとケースを送料を含めて 5,581円で購入しました。手順2で行政書士法人からの定款の返送を待っている間,注文から2〜3日で届きました。
会社設立前後は何かと代表印(実印)を押すことが多いため,扱いやすい印鑑(太さ,長さが適当で押しやすい印鑑)をお薦めします。私が購入したものは,大きさが使いやすいもので良かったと思います。ただし,一緒に購入したケースの表面に貼り付けられているフィルムにしわがよっており,見た目,ちょっとがっかりなものでした。ただ,不用意に印鑑を落としたりして印影に傷を付けることは避けたいので,どんなものであれ保管用のケースは必須だと思います。
なお,会社登記時点では実印となる代表印だけが必要で,三本セットとして販売されている,銀行印用の丸印,および会社の角印(会社の認め印として使用)は,会社登記の時点では必ずしも必要ではありません。法人用の銀行口座をネット銀行で開設する場合,例えばGMOあおぞらネット銀行は,銀行印の登録というものは必要ありませんでした。この銀行は,代表印の押印すら不要であったと思います。
また,業務の案件をクラウドソーシングサイトで得て,支払もサイト上で完結する場合,書面で見積書や請求書,領収書を発行しないことがあり,角印も本当に必要になるまで(取引先と直接書面をやりとりするようになるまで)は不要だと思います。
手順2が完了すると,いよいよ法務局へ法人登記の申請となります。デジタル庁の法人設立ワンストップサービスというサイトから,電子申請で行うこともできます。私は,このサイトを登記後に知ったので,直接,法務局へ持ち込んで申請しました。コロナ下,法務局へ足を運ぶのはためらわれましたが,今となっては,会社設立のよい思い出となっています。
手順4で作成された税務署,県税事務所,市区町村役場,年金事務所へそれぞれ提出する書類は,実際には使いませんでした。作成されたPDFの書式が,現行の各役所の書式と微妙に違っているところが気になったのと,デジタル庁の法人設立ワンストップサービスを使った電子申請を使うと,書類そのものを作り直すことになるからです。ただ,記入する内容の参考として重宝でした。
法務局へ登記申請
マネーフォワード法人設立サービスで準備した登記申請書類のPDFを印刷し,代表印(私の個人の実印)と会社印(作ったばかりの印鑑)を適切な場所に押印します。
これらの書類をマネーフォワードの中にリンクがある「設立登記書類のとじ方ガイド」という4ページのPDFファイルにしたがって必要な書類を整えます。
まず,合同会社設立登記申請書と収入印紙貼付台紙をホッチキスで閉じて,継目に会社の実印を押します。収入印紙は,法務局でも買えましたので後で提出するときに貼り付けました。
(1)合同会社設立登記申請書
(2)収入印紙貼付台紙
これは,文字通り法人登記申請を依頼する申請書で,登記手数料として合同会社の場合,6万円の収入印紙を台紙に貼り付けます。これらがばらけないように,(1)と(2)をホッチキスでとじ,とじ目の部分に会社の実印を割り印として押します。
この6万円の収入印紙の領収書はけっしてなくさないように大事にしてください。
設立登記時の印紙代は,経理上「創立費」として計上します。この創立費は,繰延資産として扱われ,会計上は5年で償却しますが,税務上は任意償却が認められています。この任意償却は,いつ,いくら,いつまでに費用として償却するかが定められていないため,会社が大きく黒字となった年度まで残しておき,その年度に一部,あるいは全部を費用化することで節税の効果を得ることができます。
同様に会社の印鑑購入費,代表者の個人の実印の印鑑証明の交付手数料も会社創立のために必要であった費用として「創立費」として扱います。
(3)代表社員,本店所在地及び資本金決定書
これは,本店所在地,代表社員の氏名,資本金を明記した書類で,設立する合同会社の法人としての「決定」を記したものです。これらは会社の重要な事項を意思決定した結果ですので,株式会社であれば株主総会にて審議,決定された「議事録」として残すことが義務付けられています。しかし合同会社は,議事録の作成を法律上義務づけられていないため議事録ではなく,社員(合同会社では出資者と役員を兼ねたもの)が合議して意思決定を行ったという立て付けで「決定書」を残すことが推奨されています。この辺りが,株式会社に比べて合同会社の方が意思決定がスピーディーと言われる所以です。より丁寧な合同会社の記録の残し方としては,特定の議題について社員が合議し合意に至ったことを示す「合意書」を作り,ここで合意されたことから決定されたとする「決定書」を作ることになります。これらは主に,税務署や年金事務所からの問い合わせに対して提出・提示するために作っておく方がよいです。特に弊社のような一人企業であれば,代表社員の思いつきで何事も決まってしまうため,形式的であってもこうした記録を残しておかないと,自分でも何をいつ決めたか分からなくなるかもしれません。
例えば,会社の設立後,代表社員(つまり私)の役員報酬を決めますが,この時も社員(私一人)が役員報酬を議題として議論し合意した「合意書」,その合意に基づいて議題とされていた役員報酬を決定した「決定書」を作成し,代表印,代表社員の個人の認印を押印してファイルしてあります。
(4)就任承諾書
書類(3)で代表社員として決定された本人(私)が就任を承諾し合同会社へ提出したという書類です。(宛先が合同会社になっている書類です。)
登記の申請日付で自分の住所と氏名を記し,個人の実印を押印します。
その上で,この書類に会社実印と会社実印の捨て印を押印します。
(5)払い込みがあったことを証する書面
書類(4)で就任を承諾した代表社員が,「設立する会社の資本金が発起人の口座に出資者から振り込まれたことを証する」という立て付けの書類です。
会社を登記する前に出資者が資本金を発起人の銀行口座へ一時的に振り込みます。これは法人名義の銀行口座がまだない(登記前ですから)時点で資本金が本当に出資できることを示す一種の「見せ金」です。私の場合,自分が持ついずれかの銀行口座(個人名義)に資本金を別の銀行口座から振り込んで,
「資本金となるお金を持っていますよ」ということを「振り込んで残高が増えた」ことで示すのです。
ここでポイントは,「すでに銀行口座に十分な残高がある」ではだめで,「振込によって資本金の分だけが残高が増えた」ことを示さなければなりません。
上記の書類に加えて,残高の増加を示すために預金通帳の表紙,銀行名や支店名,口座番号が分かるページ,残高の増加が見えるページのコピーを添付します。通帳がないネット銀行の場合,通帳と同じような情報が確認できる各Webページの画面コピーでも資料として使うことができます。
書類(5)と銀行口座の残高の増加がわかる添付資料をばらけないようにホッチキスで綴じます。すべてのページのとじ目には会社の実印を押します。
払い込みがあったことを証する添付資料がかさばる場合,各ページのとじ目に複数のページの厚みによる段差ができるため,縁が欠けるなど,きれいな印影が押せないことがあります。まったく判読できないことは論外として,割り印の性質を考えると,せめて実印が押されていることが分かる程度に押印ができていればよいと思います。
(6)印鑑(改印)届書
法人の登記と同時に法人の実印とされる代表印を新規に登録する届書です。この書類に会社の実印となる印鑑を押印し,届出者である代表社員(私)の個人の実印も押印します。
(7)別紙
定款の抜粋と登記にあたり提出する書類の一覧を示す書類です。
提出にあたって,申請人欄に会社の実印を,捨印欄に会社の実印を押印します。
(その他)
以上,書類(1)から(7)までに加え,代表社員(私)の印鑑証明書を添えます。
また,行政書士から証明書を付された定款のPDFをCD-ROMへ焼き,一緒に提出します。
念のため,定款のPDFを印刷して一部,持参した方がよいと思います。
これらを法務局へ持ち込んで,法人登記の受付へ提出します。この申請が法務局で受け付けられた日付が法人の設立日となります。郵送での申請も可能ですが,縁起を担いで,日柄のよい日を選んで提出する場合,郵便事情などで法務局の受付が前後する可能性があるため,設立日付にこだわる場合は法務局へ直接提出する方が安全です。
私は10月14日に管轄の法務局である横浜地方法務局(本局)へ書類を提出し,この日が設立日となりました。提出時にもらった登記完了予定日の紙には,1週間後の「10月21日午前中」とされていました。書類に不備などがない場合,とくに連絡はなく,10月21日の午後には登記が完了していることになります。マネーフォワード法人設立サービスで作成した書類,および行政書士に証明書を付された定款のCD-ROMには不備などなく,予定通り10月21日の午前中に登記が完了していました。
無事に登記を終えたときに撮った横浜地方法務局のビル
登記の完了日
法人登記を申請し,法務局から何も連絡がなく10月21日午前中に登記が完了しました。
同日午後に法務局へ行き,会社の登記簿謄本(全部事項履歴証明書)と代表印の印鑑証明書を交付してもらいます。税務署や年金事務所,銀行などから提出を求められることがあるためです。
最近は,これらの原本ではなく,コピーやスキャンしたPDFの提出でもよいケースが多いため,あまりたくさん交付してもらう必要はありません。(ただし,ネット専業ではない,従来の銀行や証券会社に法人口座を開設する際には原本を求められることが多いようです。)
印鑑証明書の発行にあたっては,印鑑カードを発行(無料)してもらう必要があります。個人の実印の印鑑証明書の交付申請に使うのと同じカードです。まず印鑑カードの発行を依頼します。その場で10分もせずに交付してもらえました。
その上で,登記簿謄本(一部600円)と印鑑証明書(一部450円)を5部ずつ交付してもらいました。
これらの交付申請書は法務局へ行く前に,マネーフォワード法人設立サービスから,
・印鑑カード交付申請書
・印鑑証明書交付申請書
・登記簿謄抄本交付申請書
のPDFが作られるので,自宅であらかじめ印刷し,交付手数料分の収入印紙を貼って法務局へ行きます。収入印紙は法務局でも販売しているため,現地で貼っても大丈夫です。
私の場合,会社の設立後,登記簿謄本,印鑑証明の原本を提出したのは2部ずつだけで,あとはコピー,あるいはスキャンPDFを電子申請に添付するだけでした。手数料が安くないことと,通常は発行から6ヶ月以内のものを求められるため,使わずに6ヶ月経つとただの紙切れとなります。とりあえず,三部くらい交付してもらっていればよかったと,ちょっとだけ後悔しています。
弊社では,これらの印紙代は,会社設立後,事業開始の準備に必要な費用として「開業費」として扱います。登記簿謄本や印鑑証明の提出が日常的に行われる企業の場合は,開業にあたって必要な費用ではなく,操業に日常的に必要な費用とみなされて否認されるかもしれません。まぁ,該当するのは一部の投資会社くらいでしょうし,その場合は契約した税理士がアドバイスしてくれるとものと思います。
えがきやLLC
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